【74日目】マレーシアからインドネシアへ<2>

参照:【73日目】旅人だから……マレーシアを出て、インドネシアへ<1>

船からToliToli近辺をパノラマ撮影

船からToliToli近辺をパノラマ撮影


憧れの船旅

僕らのインドネシアにおける計画というのは本当にアバウトなものだった。数年前の古いLonely Planetに掲載されていた航路図を見て、なんとなくそれぞれの島が船で繋がっていることを知り「ならば!」と考えたのが、ボルネオ島、スラウェシ島、マルク諸島、パプアを順番に船で巡るというものだった。どの島で何をするか、船のチケットをどこで買うか、そもそも本当にそれらの島が船で繋がっているのか? 何も確認しないままのインドネシア行きだった。

よく言えば、それくらい旅に対する肝が据わってきたのだと思う。すべてうまく行くとは思っていない。むしろ、うまくいかなかったとしても死にはしないし、計画通り旅が進むことと旅の面白さに何ら関係がないということを今までの経験で実感したことが大きいと思う。

【73日目】旅人だから……マレーシアを出て、インドネシアへ<1>」でマレーシアからインドネシアへの航海の拠点であるTawauにまで辿り着き、VISAや船券を買った僕らは、意気揚々と荷物をまとめ、水や食べ物を買って港に向かった。

Tawauの港では同じ船を待つ客が大挙していた。そしてその多くが顔付きが今までマレーシアで見慣れていたものと違っていた。色が黒いのもそうだが、眉と上唇のあたりの骨が突き出している。母国に持ち帰る大荷物を抱え、家族を周りに従えて、船乗り場のゲートが開くのを待っていた。

なにやらマレーシア語(もしくはインドネシア語だったのか不明)でアナウンスが流れ、人がゲートに集まる。僕らも勝手がわからないまま列に並び、周りの人に「Tarakan?」と尋ねると、笑顔で頷いてくれる。結局そのまま出国手続きをして、船着場に停まっていたスピードボートに乗って、僕らはあっけなくマレーシアを後にした。

Tawau-Tarakanのスピードボート

Tawau-Tarakanのスピードボート

ほぼ予定通り約5時間の航海を終え、Tarakanの港に到着した。とても厳密とは思えない、緩い入国審査を終え、無事インドネシア入りを果たす。ここまでは特に問題も不安もなかった。なぜならばマレーシアのTawauからインドネシアのTarakanまでの船があることはLonely Planetで知っていたからだ。問題はここから先だ。本当に何も情報がない。

15時頃、インドネシア入国を果たすと、いつも通りタクシードライバーが群がってくる。拙い英語でやりとりが進む。

「ホテルは決まっているのか?」
「Sulawesi島のToliToliに行く船があれば、それに乗りたい」
「ToliToliへの船はない。ホテルならいろいろ紹介できる」
「船は明日はあるの?」
「ない。ホテルの予算は?」
「明後日は?」
「ない」

他のドライバーも寄ってくるが、同じような会話。空港や港に集まってくるドライバーを頼って良い思いをしたことがないので、すべて突っぱねて建物を出る。すると、その1人のドライバーが駆け寄ってきて「船のことならそこの受付で聞きな。船はある」と言って去っていった。

半信半疑でその受付に行き、ToliToliへの船について訊ねると、2週間に1度の船が今晩到着するとのこと。これこそ奇跡。適当に来ただけだったが、まさか滅多に来ない船の出航日にあたるとは。客欲しさに飢えたドライバーに騙されなくて本当に良かった。

このTarakanからToliToliへは18時間の航海となるが、費用は約1,500円。その異常な安さに「やっぱり船旅は安い!」などと思っていたが、それは相応のクオリティだからだった。

港の前のカフェらしき店で、今まで飲んだどんなコーヒーよりも甘いコーヒーを飲みながら、夜の船の到着を待った――ちなみに、この後でインドネシアで飲むコーヒーはどれもこれも同じように甘いことが分かった。

船は予定の2時間遅れで到着し、溢れんばかりの乗客を飲み込んで出港した。

今まで数回乗ってきた船とは違い、今回の船は大型の客船だった。船の1階(という表現で正しいのか分からないが、甲板と同じ階層)から下が、僕らの買ったエコノミークラスの客席で、それより上が上級クラスとなる。エコノミークラスのスペースは雑魚寝用のマットレスが引いてあるが、積んでいる荷物のせいか、全体的に生臭く、空間が閉じており暑く、ジメジメとした、とても18時間も耐えられる環境とは思えないものだった。それどころか、すでにマットレスは埋まっており、僕らは木のベンチを確保するのが精一杯。これはまあまあ良い方で、階段の途中で寝る人、通路の端で寝る人など、いくらでもより悪い環境に身を置かざるを得ない人が多数いた。

深夜0時過ぎ、船は出航した。いくら環境が悪いにせよ、とにかく最初の目的地であったToliToliに辿りつくはずの船に乗ることができた。十分な疲れと、ひとまずの安心感で僕らはベンチで眠った。騒音と暑さや匂いによる寝苦しさで何度と目を覚ましながらとはいえ、とにかく寝れただけ良かったと思う。

朝になり、すこし体力が回復した僕らは船内を散策し、上級クラスのロビー的な場所に潜り込み、少なくとも暑くなく、臭くない場所で体を休めることができた。そんな中、一緒に旅をしている婚約者が白人を見かけたらしく、話すチャンスもなかったものの、同じような旅をしている人がいる安心感を感じたのを憶えている。

外国人が珍しいのか、時々インドネシア人が寄ってきては「Photo Please」といって僕らの写真を撮っていく。そして、これは船の中に限らず、その後のToliToliを始めとするどこの町でも同じようにみんなに写真を撮られた。恐らくいろんな人のFacebookやTwitterに「よそから来た変なガイジン」として投稿されたことだろうと思う。

船から見ると海岸線に並ぶ小さな村=ToliToli

船から見ると海岸線に並ぶ小さな村=ToliToli

適当なタクシーにホテルを紹介してもらい、送ってもらった。

タクシー乗ったら子どもたちが付いてきた!

タクシー乗ったら子どもたちが付いてきた!

ToliToliの風景

ToliToliの風景

そうこうしているうちに船は航海を終え、ToliToliという港町にたどり着いた。船から見たその町は小さく、とても観光産業などが栄えているような町には見えなかった。船を降りても、観光者の多い町にありがちな、観光客をカモにしたタクシードライバーなどが寄ってこない。むしろ珍しそうにジロジロ見るくらいの物だった。

Whatever Will Be, Will Be、ケ・セラ・セラ、なるようになる。

この先もなんとかなれば良いのだけど……。

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