【100日目】初めてのダイビングに挑戦
今までダイビングというアクティビティに対して、どうしても腰が重く「面白そうだけど、高いし、免許とか面倒だし」というように避けてきたフシがある。
インドネシアのブナケンという世界でも有数のダイビングスポットに来たとはいえ、免許を取るのに€400($540くらい)かかる。僕らの予算を考えると、とてもじゃないけど手が出ない。この旅の中で何回ダイビングをしても、元は取れないし、元を取るほどダイビングしていたら、最後まで旅を終えられない。
周りのツーリストたちは「絶対ダイビングすべき。新しい世界が見えるよ。スノーケルとは違うよ。ここまできて€400くらい安いものさ」と痛いくらいに背中を押す。そんなわけで頭を悩ませてたら、スタッフの1人が「体験コースなら免許なしで€60」だと言う。
それだ! と僕らは食いついて、その提案に乗った。
それでもなお「どうせなら免許とりなよ」と進めてくるドイツ人たちの甘い声を振りきって、僕らはブナケンでの最終滞在日である9月20日に初めてのダイビングに挑戦した。
またもや水中の写真はないので、ひたすら語りたいと思う。
これからダイビングでもやってみようと思う人の背中を押せれば嬉しい。
ガイドは僕らにウェットスーツをあてがい、僕らは初めてのウェットスーツの感触とお互いの見た目にキャーキャー言っていた。体験コースに行くのは僕らだけ、僕ら2人のために船をだし、ガイドが来て、手伝うためのスタッフが2名つく。なんとも充実のプライベートレッスンだ。
刺青がものすごく似合うガイドは事細かに道具の使い方を教えてくれる。もっと適当かと思ってたけど、凄く慎重で安心した。レギュレーターの使い方、深度計の使い方、空気の残量の見方、言葉が通じない水中で使う最低限のサインを教わるも「本当に水の中で息できるのかよ」と疑心暗鬼な僕ら。あれよあれよと、船上のレッスンが終わり、海へ飛び込んだ。
背負った道具は重いが、水の中ではフローティングジャケットのおかげでまったく感じない。顔を海面につけ、レギュレーター越しの呼吸を数度繰り返す。ここまでは感覚的にはスノーケリングと変わらない。そして、ガイドの指示に従って、フローティングジャケットの空気を抜く。徐々に体が沈み、その重さで自力では海面に上がれない感覚に不安感が高まるーーちなみにこの時「ちゃんと呼吸しなきゃ!」という気持ちが高まり、鼻から息を吐いてしまい、マスクの中が海水だらけになった。
余裕はないが、呼吸にもなれ、深度1.5mくらいで簡単な練習をいくつか行う。水中でレギュレーター(空気を口に流す道具)を外す練習はドキドキしたが、やってみればなんてこともない。
だいぶ慣れた頃、ガイドは深みを指さして「付いてこい」と合図する。ここから僕らの本当のダイビング体験が始まった。
深度10mくらい。スノーケリングでは見下ろしていたサンゴや魚の群れが目の前にある。まさに感覚は無重力。上下左右にクルクル回る(あんまり推奨された動きじゃなさそうだけど……笑)と本当に重力がないように感じ、どこが上だかも分からなくなる。海面を見ると、船上で暇を持てあましたスタッフが泳いでいるのが見える。その人の小ささに自分がいる深さを実感する。
小魚の群れが自分を避けるように左右に分かれ、通りすぎていく。珊瑚からは赤みの鮮やかな小魚が恐る恐る顔を出し、目の前にいる巨大生物(僕ら)に驚いて引っ込む。
酸素残量がだいぶ減ったころ、僕らのダイビング体験は終わった。約1時間。あっというまの体験だった。
ーードウデシタ?
日本語を少し話せるガイドが言う。
ーーSo, how was your first diving?
ダイビング歴2500回を越える陽気なドイツ人が訊ねる。
「最高でした!」
ブナケン最後の日にこの体験ができて本当に良かった。この先、ダイビングをすることがあれば、間違いなくこの場所と比較してしまうだろう。そんな場所が初ダイビングができたのも、この旅のおかげ。旅のおかげでいろんな体験ができているな、とつくづく思う。