【128日目】市場千万、タイでお買い物を楽しもう

――市場にもいろんな市場がある。

そう書けば「うんうん、肉、野菜、魚、雑貨や衣類、といったいろんな市場があるよね」と同意してくれる人もいるだろうが、今回の話に出てくるバラエティはそういう形ではない。

バンコクの中心部から10kmほど東に離れた場所にあるBang Kapiと呼ばれる街に僕らは滞在している。Miaの友人の母親であるトイの自宅にお邪魔している。そんな中、まったく観光をしようとしない僕らに業を煮やしたのか、ある日「明日、早起きして水上マーケットに行こう」という。

もちろん、そんな誘いがあれば乗るわけで、僕らはちょっと寝坊しつつもその水上マーケットとやらに向かうことになった。トイの説明がいまいち掴みきれず、その水上マーケットというのがどこにあるのか、どれくらい遠いのかも分からず、とにかく彼女の車に乗り込んで運ばれていく。なんと呑気な旅行者か、と我ながら思う。

水上マーケットに着くと、トイはスタスタと先頭を歩き、素早く船の手続きを済ませて、なんと1隻の船を貸し切った。普通は乗り合いの船にみんなで乗るわけだから、なんとお金持ちの発想か。そのおかげで僕らは自由気ままなに水上マーケットを楽しめたのだからありがたい。

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水上マーケットというのを見たことがあるだろうか? 文字通り水上にあるマーケットなのだが、普通ならば歩いて買い物をする代わりに、ここでは船に乗って店を回る。店は川沿いに並び、それ以外にも客と同じように船で物を売る人も多い。カヌーのような小さな船の上で炭を焼き、バナナ焼きを作ったりしている様子は圧巻だ。

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この水上マーケットは観光のために作られたという話も聞くが、少なくとも僕らが見に行った場所では、実際に川沿いに住む人がいて、しかもその家は道路にも繋がっていないのだ。水の国バンコクなんて言葉も聞くが、こういう景色に由来するのだろうと思うと、それが美しさだけではなく、独特の苦労の上になり立つ物だと実感する。

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そうは言っても、この水上マーケットで売られている物はやはり観光客向けだと思う。金額も、品揃えも現地の人が本当に今晩のおかずを買いに来る場所ではない。それが少し寂しく思うが、まぁ、昔は生活の拠点だったであろう景色を覗き見るのは一興だ。また、その川を少し進むと寺院がある。地元で信仰されている、由緒ある寺院になんとなく僕らも心を静めた。

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さて、その水上マーケットを出て、僕らはトイに連れられてもう1つのマーケットへと向かった。その場所の名はタラート・ロム・フープ。意味は「傘を閉じる市場」だ。

トイの後ろをついて歩くと、なんとトイは線路へと入っていく。というか、みんな線路へと入っていく。それどころか線路沿いには所狭しと露店が並ぶ。

「ああなるほど。廃線を利用した市場なのね」

そんな事を考えていると、見透かしたようにトイが「電車が来ると見物なの、さっき聞いたら10分で来るみたいよ」と教えてくれる。電車が来ると言っても、客は線路を歩き、店は線路に被さるように開かれている。電車が通る隙間はない。そんな中、放送で何かを言っている。たぶん「電車がくる」とでも言っているのだろう。

「そろそろ電車が来るから、安全な場所に入って」

トイが買い物をしながら僕らに伝える。他の客もなんとなく露店の隙間に入り込み、雑談している。僕らは訳も分からず、スペースに身を滑り込ませ、来るはずの電車とそのとき起こる「何か」に期待した。

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カーブの向こうから汽笛が聞こえる。その瞬間。屋台の傘が一斉に閉じた。商品棚の足にはもれなくタイヤがついていて、店員がサッと引く。電車が通れる最低限のスペースを残してすべての露店が”収納”されたのだ。

なるほど「傘を閉じる市場」だ。

電車が通り過ぎれば、何事もなかったように露店が開き直し、客も買い物を始める。電車が来る直前に買ったものを、電車が通ってから支払う。まるで止まっていた時間が動き出すようにすべて元通りになる。

この独特な文化のせいで観光地として知名度が高くなった市場だが、実はこれは水上マーケットと違い、本当に地元の買い物場所として活用されている。価格も、品揃えも地元向け。

市場というのはその土地の食文化が見えるという意味で、僕らは好きなのだが、まさかその市場でこんなアトラクションが見られるとは思わなかった。

ここに行く人はぜひ傘が閉じる風景だけではなく、実際に野菜や肉を買ってみてほしい。日本とは少し違う品揃え、少し違う並べ方、そんなものが面白かったりするのだ。

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