【172日目】僧侶の日常とスースーの噛み煙草

カウチサーフィンでウヴィセイタの僧院にやってきた。その日々を通して、僧侶の生活を紹介しよう。

2013年12月1日

僧侶は朝の6時に起きて町に出て行く。

時間は季節や本人の調子によっても異なる。4時や5時に出て行くこともある。いつもの赤錆色の袈裟を着て、裸足で出て行く。持って行くものは片手で抱えられるくらいの蓋付きの容器だけ。昭和の家に置いてありそうな、あの金魚鉢を思い浮かべればいい。大きさといい、形といい、ちょうどあれが近い。黒檀風の黒い木製のものや、ステンレス風の素材でできたものがあるようだ。

赤錆色の袈裟に、黒い金魚鉢大の容器を持った僧侶たちは一斉に僧院を出て行く。同じくらいの時間に出ていくので、まさに ”わらわら” と僧侶が待ちに向かって歩いて行く。

僕らはその様子を後ろから眺めていた。僕らを泊めてくれているウヴィセイタも「行ってくるね」とサラリーマンの出勤風景のように出て行く。まだ外は涼しい。

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↑町に出て行くウヴィセイタ

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↑他の僧侶たちもこうして町に出て行く

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↑こういう光景はそこかしこで見られる

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↑もらってきた食べ物。本当にうまい!

町に行くと彼らは決まった家を巡回する。一軒一軒回って、その家々の食べ物をもらってくる。例の金魚鉢風の容器にそれを入れてくる。その容器の中には更に小さい小皿が入っており、カレーやおかずを小皿に、そして底にはご飯をもらったりする。

早朝5~6時に家々を周り、僧院に戻ってそれを朝食とする。食後、ウヴィセイタは珈琲を淹れて飲む。ひと休みすると、また朝食用の食事をもらいに同じように町に出て行き、昼前に帰ってくる。そして昼食を終えると、その日の用事は終わる。

僧侶は午後になると食事を取らない。つまり朝と昼の2食しか食べない。

その話をしながらウヴィセイタは凄く現実的な話をしてくれた。

「仏教の決まりとして、午後の食事は禁止されているけど、もちろん老人や子ども、病気の人は例外だ。それどころか、健康な僕らのような人でも我慢できずに食べてしまうことだってある。そういうときは先生に懺悔して許してもらうんだ」

先生というのは僧院にいる、偉い人のことらしいが、実際にどういう立場の人か聞きそびれてしまった。

「でも先生は『外では食べないようにしなさい』とも言っている。町の人に見られると、僧侶が悪く言われるから」

僕はウヴィセイタの話を聞いて、凄く人間的だと思った。

お金の話もしてくれた。

「仏教としてはお金をもらうことは禁止されている。だけど現代において、病院にいくのも、遠くの親戚に会うのも、お金がかかる。昔とは違う部分もある。そういうこともあって、お金をもらうこともあるし、必要だから受け取る。子どもの僧侶はお菓子が買いたくてお金を欲しがることもあるんだよ」

僕は仏教について詳しいわけでもないし、お互い母国語ではない英語でのやりとりなので細かいニュアンスは違うかもしれない。しかしこの会話で、僧侶というのはやっぱり人間で、そして尊敬できる人なんだと思った。

僕らが「散歩に行く」と言うと、ウヴィセイタは「あの道の角にスースーという女性がいる。仲が良いんだ。君らのことも話してあるよ」と教えてくれた。

行き先もない散歩だったから、その道の角とやらに行ってみた。

噛み煙草の屋台があり、男女2人が静かに座っていた。半信半疑で「スースー?」と尋ねると、頷く。英語が一言も話せないようだ。「ウヴィセイタ」と僧侶の名前を告げると、横のベンチに僕らを座らせた。

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↑右がスースー

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↑スースーがMiaにマッサージ

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↑スースーの屋台の隣でバイク洗車する少年

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↑通りがかりの馬車にカメラを向けたら手を振ってくれた

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↑例の噛み煙草。中にスパイスやらが入っている

寡黙なのか、彼女は一言も話さない。そして、黙って煙草を僕ら2人にくれる。その場で作る噛み煙草も2人分作ってくれる。バナナの葉で作った葉巻もくれる。

ミャンマー人がこぞって噛んでは、路上に赤いつばを吐く、あの噛み煙草を僕らは初めて体験した。そして遠慮がちに道の端に赤いつばを吐いた。舌の先が痺れる。妙に甘くもあり、苦味もある。なるほど大人向けのガムのような感じか? 飲み込んではいけないと前に言われたことがあったので、つばが溜まっては吐く。溜まっては吐く。溜まっては吐く……。なるほど、そりゃミャンマー人はひっきりなしにつばを吐くわけだ。

スースーはMiaの背中を終始揉んでいる。

さて、お金を払おうとすると、スースーはお金はいらないという。突然やってきて、紙巻き煙草・葉巻・噛み煙草とあれこれ貰って、1銭も払わないわけにもいかない、としつこくジェスチャーで伝えるが、断られる。

ありがたく、僕らはそれを貰った。散歩の帰り道、ミカンを1袋買って、スースーの屋台に持って行った。それさえも彼女は受け取らないが、無理矢理手に持たせて僕らは去った。

別の日に、またスースーに会いに行くと、また煙草をくれた。

ウヴィセイタといい、スースーといい、どうしてこうも素敵な人が多いのか……。

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