もうすぐダムに沈む遺跡 ハサンケイフを散策する

ふとした出会いで、バトマンという町の大家族の家に泊まることになったわけですが、いざハサンケイフという遺跡のある町に行こうと思ったら、良き偶然にまた救われたのでした。


ハサンケイフって?

日本でたぶん1番使われているガイドブックである「地球の歩き方」にはたった1ページしか載っていない、言ってみればおまけ的観光地みたいに扱われているハサンケイフですが、地元の人に聞くと多くの人が「東トルコに来たらぜひ行くべき」と薦めてくれる場所です。

たぶんですが、日本人は短期の旅行者が多くてイスタンブールを含めた西側の観光地を回る人が多いのでしょう。カッパドギアといった有名な観光地はほとんど中央から西側にあるので、そのあたりを数日で回って帰るのがゴールデンコースなのかもしれません。

で、ハサンケイフは何かというと、古代ローマ時代は要塞が築かれていて、7世紀にアラブ人に支配され、12世紀にはチュルク族のアルトゥク朝の首都があったと言います。まぁ、チュルク族も、アルトゥク朝もなんのことか分からないと思います(ぼくも分かりません)。

でも、ぼくらが頻繁に使うLonelyPlanetにはこんなことが書かれています。

「2012年にダムに沈む。失われるのが惜しい遺跡」

ん? 今は2014年……、まだダムには沈んでいないようです。どこの国に行ってもこういう事業は遅れるもののようですね。事業が遅延しているから見られるという意味では、すごくラッキーな出会いだったとも言えます。

ハサンケイフの案内人

昨日の記事に書いたとおり、ぼくらはハサンケイフから車で40分ほど離れた場所にあるバトマンという町の大家族の家でお世話になっています。おじいちゃんに3人も妻がいて、子どもが合計で33人ほど。で、さらに孫が……、という日本ではなかなか見かけない大家族です。

「明日ハサンケイフに行こうと思うんだ」
「ハサンケイフにマルヴェっていう英語が話せる従兄弟がいるから、案内してもらいなよ」

というわけで、お願いすることに。こんだけ家族が多ければどこの町に行っても親戚がいそうですね。

トルコでドルムシュ呼ばれるミニバスに乗って、ハサンケイフを目指します。運転手に目的地を伝えるとそのあたりで降ろしてくれる仕組みです。英語が通じないので、乗るときに大家族のひとりが目的地を伝えてくれました。そしてハサンケイフのバス停でマルヴェと待ち合わせるという作戦です。

するとそのドルムシュ、客が全員降りると細い路地に入っていく。普段だったらドルムシュって大通りのバス停みたいな場所に止まるんです。それがどんどん路地に入っていく。周りの風景を見る限り、すでにハサンケイフの中にいるようだけど……。

「ハサンケイフで降りたいんだ!」

よく分からないので、運転手にそう訴えると、運転手は「分かった分かった」ってな具合に受け流す。ぼくらをどこに連れて行く気だ? と不安になってきた頃、細い路地の誰かの家の前にドルムシュが止まりました。

車を降りる運転手。よく分からないので、ぼくらも降りる。すると……

「マルヴェ! お客さん!」

と運転手が叫ぶ。そう、あとで分かったのですが、偶然にもこの運転手はマルヴェの知り合いで、どういうわけかぼくらがマルヴェと待ち合わせることを知っていたようで、親切に家に連れてきてくれた、というわけです。ありがたいですね。でも、マルヴェは約束通りバス停で待っています。運転手にそれを伝え、電話してもらいました。

やっと会えた

そうこうしてバス停から帰ってきたマルヴェに会うことができました。

このハサンケイフってのは町に点々と遺跡があるわけではなく、町全体が遺跡です。その辺の家も古いもので、360度、どの方向を見ても遺跡遺跡遺跡。路地を見ても……

遠くを見ると壊れた眼鏡橋が見えます。手前にあるのはモスクで、定時になると備え付けのスピーカーから大音量で祈りの歌?が流れます。

この写真右上の建物、これ古い古いトルコ風呂です。川を挟んで遠かったので見に行きませんでしたが、昔は社交場として栄えていたそうです。日本の戦闘みたいなもんですかね?

見上げた姿も絵になりますねェ。

普段、こういう写真撮らないんですが、なんかマルヴェの妹が撮れ撮れと言うので撮りました。ここにくる観光客はみんなやるんでしょうね。慣れた手つきでポーズを作ってくれました。恥ずかしい……。

暗い写真しかなくて申し訳ないのですが、マルヴェです。

このハサンケイフの見所のひとつとして、岩の要塞があります。数年前に落石事故があり、今は入れないそうですが、すぐ横までいけるので、散歩がてら歩き回ってみました。

そして近くには古く、朽ち果てたモスクもあります。もう、本当に朽ち果てる直前で、崩壊を止めるために補強工事がされています。

古くオンボロですが、こうやって見ると彫刻が見事! 

暑い

このハサンケイフ、何となく写真から伝わるかもしれませんが、凄く暑いです。冬は雪が降るほど寒いのですが、夏は外出できないくらいに暑い。ぼくらもちょっと散歩して、あとはマルヴェの家でお茶をもらったり、ご飯をご馳走してもらったり、という具合にリラックスしていました。

結局観光そのものよりも、こうやって出会いを楽しむ方が面白くなってしまうんですよね。

そんな食事をもらいつつ、聞いてみました。

「ここがダムに沈むって聞いたんだけど……」
「そうなの、わたしたちの家もなくなるから、向こうに引っ越すの」

そう言って川の向こうの、丘の上を指差します。

「寂しくない?」
「もちろん、この家が好きだから」

日本でもダムを造るために沈んだ村はたくさんありますが、なにもこんな美しい村を沈めなくても……。しかも遺跡としての価値だけではなく、その遺跡のような町にまだ人が住んでいるということが魅力的なのに……。

政策とか、そういうのって時に悲しいですね。

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