スペイサイドの蒸留所巡り2 グレンモーレイでの楽しい試飲の話

蒸留所巡りといいながら、ぼくらが行ったのはふたつだけ。もうひとつ訪ねたグレンモーレイのレポートをします。


こちらはアクセスが簡単なのです

<地図>

ほとんどの蒸留所がウイスキー街道にあるため、エルギンという街でバスを見つけ、結構長い距離を移動しつつ、慣れない土地で「どこでバスを降りればいいんだろう?」という迷いを延々としなくちゃいけません。それはそれでおもしろいし、ウイスキー街道沿いには本当にたくさんの蒸留所があるので好きな人は是非チャレンジして欲しいのですが、苦労してまでは行きたくないって人や、ちょっと時間があるから1個余計に行ってみようかな、という人はぜひこのグレンモーレイを攻めてみてください。

グレンモーレイはエルギンから徒歩で行けます。30分弱歩くかもしれませんが、慣れないバスと違って、地図を片手に町並みを楽しみながら歩いていればあっという間です。途中で見られる家々も風情があり、散歩としてもなかなか楽しいと思います。

例えば庭に注目してみると、ちょっとした特徴を見て取ることができます。

上の写真、庭が殺風景と思われるかもしれませんが、実のところこういうシンプルなスタイルの庭が多いんですね。どうやらスコットランド全体で同じかどうかは分かりかねますが、少なくとも北部に位置する小さなエルギンという街では、確固たる信念を持って誰も餓虎のデザインを採用しているようです。

花鮮やかなイメージのある “イングリッシュガーデン” とも違う。スコットランドの庭デザインだと思うと、なかなかおもしろいものです。

ブラブラと町並みを見ながら歩いていれば、向こうに蒸留所らしき建物が見えてきます。こんな蒸留所が住宅地の中にあるのが、驚きです。とはいっても、日本酒だって酒蔵がへんぴなところにあるとは限らず、商店街のど真ん中にあったり、家々に囲まれて建っていたりするのを見たことがあるので、似たようなものなのでしょう。いかに地域に密着しているのかがよく分かります。

グレンモーレイ蒸留所

さて、到着したらさっそくビジターセンターに向かいます。

中に入ると、カフェになっています。このカフェの客がほとんど地元の人だったりするのです。近所のおばちゃんたちの憩いの場になっているようです。たしかにマフィンやスコーン、各種コーヒ−、紅茶、軽食など、蒸留所のビジターセンターという枠を超えて、利用されているのが分かります。

ここは見学は有料でした(金額は失念しましたが、小銭程度です)。定時に始まるので、それをしばし待っていましたが、とうとう他に人は来ず、僕らのためだけのプライベートツアーとなりました。

見学ツアーの流れは、スコッチ造りの流れと同じです。というか、スコッチに限らず、ほとんどのお酒(蒸留酒と呼ばれるもの)が同じような流れをたどります。素人ながら、誤解を恐れず簡単に説明すると

  1. 原料から糖分を取り出す(スコッチなら大麦を温水で加熱し、糖化。日本酒なら米から)
  2. 糖分を発酵させてアルコール分を作り出す
  3. 蒸留させて濃くする(要するに熱して、気化させ、そいつを冷やしてまた液体に戻すということ)

※注(2015年2月19日):糖化の手順が誤っておりました。ご指摘により修正いたしました。

で、このままだと透明なアルコール飲料ができあがるので、樽で熟成させ、樽の味をつけていく、というわけです。例えばブランデーであれば、ワインを蒸留すればよく、ラムであればサトウキビの糖分を発酵させ、蒸留する、というわけ。

とにかく酒造りというのは原料から糖分を取り出して、発酵させる。これに付きます。これがいわゆる醸造酒で、それを蒸留させれば、蒸留酒。だから原始的なお酒というのは、果物を上手に腐らせて作るというわけ。最初っから糖分たっぷりだから簡単なんですね。

ちなみにスコッチの多くは糖分をピート(泥炭)で乾燥させるため、良く言う「ピート臭」というのがつく特徴があります。とくにアイラ島のスコッチはその傾向が強いです。

下の写真が糖化〜発酵の流れです。

下の1枚の写真だけは参考用にグレンフィディックの蒸留施設です。グレンモーレイのは撮り忘れました。とにかく蒸留施設はこういう魔女の帽子のような形をしていて、どこの蒸留所もほとんど同じです。


途中写真撮影が禁止の場所があり「そりゃ、企業秘密的な超重要な酒造りの極意のようなものがあるのでしょうか?」と小声で聞いてみたところ、粉じんが多く、万が一撮影時のフラッシュなどで爆発するとマズいので、とのことでした。

樽コーナー

で、スコッチの作り方の話を書いた際に、ちらりと触れましたが、スコッチの味付けに置いてもっとも重要なのは樽で寝かせる熟成の工程です。

昨日のブログにも書きましたが、樽職人を自前で抱えている蒸留所もありますし、樽屋と契約して外注しているケースもあるようです。ウイスキー街道沿い樽工場も見かけました。

ただ、昨日のブログの繰り返しですが、樽は新品を作って使うのではなく、他の酒を造るために使われた樽を再利用します。それによって、前に造っていた酒の香りや味をスコッチにつけていくためです。言い方は悪いですが、他の酒がなければ作ることができないという意味で、寄生虫的な製造方法です。使われるのはバーボン樽シェリー樽ポートワイン樽など。ルールはないので、どんな樽でも使います。

ほとんどはバーボンで、シェリーなどは割と高い銘柄に使われることが多いようです。というのも樽の仕入れ値が高いんですね。シェリー樽で寝かせたスコッチは本当に甘い香りがして、好きでした。ただそれだけだと甘くすぎるのか、ぼくが試したやつはバーボン樽のスコッチとシェリー樽のスコッチをブレンドしているものでした。うまかった!

さて、下の写真、ずいぶん散らかった樽の貯蔵庫ですが、本当に寝かしている樽は写真左にうっすら見えるように、整然と並んでいます。ここで広げてある樽は、グレンモーレイの味を決めるベテランのテイスターが日々、いろんなブレンドを試してみる実験コーナーなのです。

だからそれぞれの樽がまったく違う樽になっています。長く寝かせたもの、短いもの、バーボン樽、シェリー樽、他の樽、混ぜて更に寝かせたもの。そういうものが広げてあり、ここで「アーでもない。コーでもない」と日々うまいスコッチを研究しているわけです。

そんな中で、ひとつ透明の樽が!

これは見学者用のサンプルです。両面が透明になっているので、中のスコッチが見えるというわけ。最初は真透明なスコッチも長く寝かせると、こうして美しい琥珀色が付いてくる、というわけです。

試飲

見学の定番は試飲です。試飲のしかたは蒸留所によって違うようです。グレンフィディックではひとり3種類の銘柄を出されて、比較しました。ここグレンモーレイではぼくらふたりしかいなかったということもあってか、変則的な出し方をしてくれました。

3種類の標準的な銘柄と、2種類の特別な銘柄を1杯ずつ出してくれて、それをふたりで飲む、とまぁそういうわけです。

銘柄を挙げていくと

  • GLEN MORAY CLASSIC
  • GLEN MORAY Aged 12 years
  • GLEN MORAY Aged 16 years
  • GLEN MORAY Chardonnay Cask Matured
  • GLEN MORAY Port Cask Finish

さて、ここまでの説明をちゃんと理解していると、この銘柄の名前からいろいろ分かるわけです。当たり前のことなんですが、今までちゃんと考えたことがありませんでした。

最初の3つは基本的に寝かせた年数の違いです。10年、12年、16年と寝かせているわけです。多くの銘柄でこういった基本ラインの銘柄はバーボン樽を使っています。ただしちゃんと調べると、長く寝かせたものはシェリー樽を少し混ぜていたりと、差別化しているようです(グレンモーレイについては失念! たしかシェリー樽を20%程度混ぜていると、言っていたような……)。

さて、残りのふたつは特別な銘柄になります。

最初の Chardonnay Cask Matured はその名の通り、Chardonnayというフランスワインの樽を使っています。ラベルを見ると10年と書いてあるので、熟成期間は10年。もし興味があれば、同じ年数を寝かせたClassicとこれを比較すれば、同じ熟成期間で樽違いのスコッチを試せるというわけ。

最後のPort Cask Finishはまた独特です。名前にPort Caskと入っているので、ポートワインの樽を使っているのですが、Finishと余計な単語が付いています。これは例えば「バーボン樽で10年寝かせた後で、1年だけポートワインの樽に移して寝かせた」ような場合につきます。年数はあくまで例ですし、最初の熟成をシェリー樽でやっているケースもあるでしょう。とにかく何かの樽で長く寝かせた後、別の樽に移して、再度寝かせるという製法ですね。凝っています。

さぁ、これだけ分かれば、スコッチを選ぶポイントが見えてくると思います。スコッチを選ぶときは以下のポイントに気をつけると、いろいろ比較しやすいですよ。

  • 蒸留所(どこで作られているか? ハイランド? ローランド? アイラ島? などなど)
  • 熟成年数

これに加えて、麦芽の乾燥にピートを使っているかどうか? とか各工程の違いも当然あります。興味がある人は調べてみましょう。こうやって知識が付くと、闇雲に買うのではなく

  • 同じ蒸留所の年数が違うもの
  • 同じ年数の樽が違うもの
  • 樽も年数も同じだけど、蒸留所が違うもの

などと楽しく比較ができます。好きなスコッチを見つけたら、それと近い製法の、別の蒸留所を試してみるなんてのもいいでしょう。

スコッチ楽し

とまぁ、知識が付いてくると書きたくなるんですね。きっと詳しい人が集まれば、こういう話に花が咲くのでしょう。こういううんちく話も酒の楽しさのひとつなので、楽しく飲みましょう。

でもスコットランドに来て分かるのは知識だけではありません(だいたいこういう知識だけなら、本を読めばすぐ分かるし、ネットで調べてもすぐ分かる)。本当に分かるのは、作られているその土地の気配が分かること。寒くて、キレイに晴れることの少ないスコットランド。その分厚い雲の下で、身体を温めながらのむスコッチってのは、また日本で飲むのとは違ううまさがあるものなんですよ。

スコッチが 好きなら行こう スコットランド

では。

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