ひとつの国に通貨がふたつ 使いこなさないとキューバ人と出会えない

キューバにはふたつの通貨があります。上手に使わないと損してしまいますし、本当のキューバの姿が見えにくくなります。


ふたつある通貨

最近はオバマの国交回復交渉に伴って、キューバに関するニュースも増えてきましたね。ぼくも乗り遅れないように、と東京新聞の電子版を購読していますが、チョコチョコとキューバの記事を見かけます。

最近で言えば2月23日朝刊で、アメリカとキューバについて1面割いて説明していました。その中でこの通貨のことも触れられていて、“二重通貨制” という言葉で説明されていました。この言葉は知りませんでしたが、たしかに文字通り、通貨が二重に存在するのです。

ふたつの通貨の概要

兌換ペソ(=CUC=クック)
現地では「クック」と言えばこちらを指します。こちらは現在、米ドルとほぼ同等の価値があります。外貨と交換可能な通貨はこちらですので、外国人がキューバについて両替所に行くと、この通貨に両替されます。
ペソクバノ
現地の人のための通貨です。「クバノ」というのは分かりやすく言えば「キューバノ」で「キューバ人の」という意味になります。価値はクックの25分の1。つまり、25ペソクバノ=1クック。外国人は銀行でクックから換金することで、ペソクバノを入手できます。

歴史

アメリカとの関係が悪くなるまではキューバ内でも米ドルが使えました。外国人はみんな米ドルでやりとりしていたんですね。ところが関係悪化に伴い、米ドルが使えなくなり、その代わりとして同価値のクックという通貨が出来た、というわけ。

両替

ちなみに米ドルと価値は同等ですが、米ドルからクックに両替する場合は10%の手数料がかかります。なのでキューバに行く人は米ドル以外の通貨を持っていきましょう。ぼくらはATMを利用して、直接CUCをおろしましたが、アメリカ系銀行はATMが使えません。日本円かユーロあたりを持っていきましょう。

見分け方

クック紙幣には「Peso Convertibles」と記載されています。

使い分け

ふたつ通貨があるとはいえ、それらは交換可能なお金です。そう考えると、違いさえ知っていればいい、というところですが、使えるお店が違います。そしてそれこそキューバ人と外国人を分ける線引きとなっています。

はっきり言います。クックは外国人用、ペソクバノは現地人用です。で、お店もクックのお店と、ペソクバノのお店が存在します。外国人が好きそうな雰囲気の洒落たレストランやカフェはどれもこれもクックのお店です。例えば1食の金額はドリンク・デザートなども付いて10クック前後。1000円もするってわけ。コーヒーも2〜3クック。でも外国人は払えるので払うんです。

お金を持っている人がお金を落としていくことに反対する気はないのですが、旅行の目的が「キューバらしさを味わいたい」と言うならば、キューバ人がひとりもいないレストランに大金落とすのは本末転倒。キューバ人の平均月収は20ドル程度。1食10ドル払えるわけありません。

そこでぼくらのような人は、観光地化された通りを外れて、ローカル色の強い通りに行きます。そうすると小さく薄暗いお店がチョコチョコ現れます。で、看板の金額を見ると

  • コーヒー:1
  • 定食系の食事:20
  • サンドイッチ:5
  • ピザ:10

これ見るとコーヒーが1ペソクバノ、ハムサンドが10ペソクバノと分かりますね。

とか書いてあるんです。通貨が書かれておらず、こう数字が並んでいる。で、通貨がふたつあることを知らないと「ふ〜ん、コーヒーは1クックね、レストランより安いね」となるのですが、とんでもない!! これはみんなペソクバノの料金。つまり円に直すと

  • コーヒー:4円
  • 定食系の食事:80円
  • サンドイッチ:20円
  • ピザ:40円

レストランより安いどころか、レストランで払う額の税金分より安い! コーヒーで比較すると、レストランだと200〜300円。こういうローカルのお店だと4円。ワンプレートの食事だとレストランは600〜1000円。ローカルのお店だと80〜100円。

はっきり言います。内容にそれほど差はありません。一応旅行客向けのレストランは体裁だけはキレイに整えられていますが、なにしろ物不足が激しいキューバです。高い金を出しても良い素材が手に入るというものでもありません。食べ比べてみると、安いローカルのお店の方がうまいくらいに感じます。

クックで買える食事と、ペソクバノで買える食事を比べてみましょうか。

まずはクックのレストラン。

ぱっと見色鮮やかでしたが、手前の黄色い肉が固い固い。

色鮮やかで、野菜が多いという意味でこれは良い定食でした。

ちょっと散らせてみたネギなど、創作感を感じますね。でも内容は10分の1の価格のものと変わりなく……。

でこちらがペソクバノのレストラン。

これはたしか20ペソクバノ=80円の食事。鶏肉はだいたいどこで食べても美味しかったですね。

見た目はうまそうでもないけど、実は最高に旨かったスープ。これ値段は10ペソクバノ(40円)以下だったと思います。



他にもペソクバノで買えるもの。





こういう事情から、旅行客とキューバ人はお店で出会わない仕組みになっているのです。ぼくらは数日かけてこのことに気付き、それからはもっぱらローカルのお店に入り浸っていました。しかし外国人はほとんどこない。

ペソクバノのお店は、まぁあんまり洒落っ気がない。例えば下の写真。アイスクリームのお店なんですが、店頭が鉄格子。目の前まで来れば看板もありますが、遠くからは見つかりません。て、この鉄格子越しに商品をやりとりします。このお店、ぼくが買った特大アイスが5ペソクバノ=20円。激安!


現地の人にとってのクック

ぼくらが仲良くなったキューバ人の学校の先生がいました。学校の先生というのはもちろん国に雇われているので、給料は国から支給されます。彼の月収は平均通りで20ドル程度。これとは別に医療・教育が無料で、食事が格安で配給されます。配給の食事は少ないので、どうしても買い足すことになります。安いとはいえ、外食すると10〜25ペソクバノ(0.5〜1ドル)使ってしまうので、ひと月の終わりにはあまりお金は残りません。

そこで彼は仕事が終わった後に自転車タクシーのアルバイトをします。外国人を乗せてクックでお金をもらいます。それで少しお金を貯めて、時々外国人が行くようなバーに行き、洒落たお酒を飲みます。モヒートやダイキリといった洒落たカクテルなどはクックのお店に行かないと飲めません。その男性の言葉を借りると

「良いものはクックで買わないと手に入らない」

と言うのです。食事などは僕らからすればローカル店の方がウマいくらいなのですが、やはり良い服。良い酒。良いタバコなど、生活必需品から外れるものはクックのお店でしか手に入らないのです。そうなるとキューバ人にとってはクックで手に入るものに憧れる。だからアルバイトをして自分でクックを稼ごうとするというわけ。

例えばモヒートを外で飲むと安くても3クック程度。高い店だと6クックくらいします。彼らの月収20クックと比べれば、それがいかに高いか分かりますね。

気をつけて欲しいこと

あなたがキューバに行くとして、どちらの通貨を利用するかはあなたの考えにお任せします。クックの洒落た店も楽しいです。ぼくらは食事やおやつはペソクバノのお店、夜のバーなどはクックのお店に行っていました。バーではサルサ音楽の生演奏や、キューバらしいラムのカクテルが飲めて楽しいです。

クックだけで旅行することももちろん可能なので「こんな面倒なこと考えたくない」という人もいるでしょう。しかしこれが騙しのテクニックに使われることもあるのです。

二重通貨制を使った詐欺・ぼったくりの手口

釣り銭詐欺

例えば10クックの食事を食べ、お金を50クック紙幣で支払ったとしましょう。おつりは40クックなのですが、お店の人が40ペソクバノで返してくるケースがあります。

40ペソクバノは2クックにも満たない額です。つまりこの場合、あなたは38クック程度損したことになります。

おつりがどちらの通貨か、必ず確認しましょう。お札ならば「Peso Conpertibles」と書かれていることをチェック!

料金だまし

これはキューバに着いた1〜2日目あたりにぼくらもやられました。

ぼくらがやられたケースを挙げましょう。キューバに着いた初日です。まだ何にも知らず。通貨が2個あるということは何となく知っていたが、よく調べてもいなかったという時期です。お腹が空いて、たまたま見つけたのは路上のピザ屋。今思えばペソクバノのお店です。

ピザの料金が10と書かれています。ぼくらはふたつの通貨のことがよく分かっておらず、この料金を見て「10クック?ってことは10ドル? そりゃ高すぎる。そんなに高いわけはないぞ」と気付いたものの、良く意味が分からず試しに1クックを見せたら「これでいいよ」と受け取ってくれました。結果僕らは10ペソクバノ=0.4クックのピザに、1クック支払いました。まぁ、たかだか0.6クックの損ですが、あとで思うと「やられたな」と悔やみます。

もっとありそうな騙しは、1ペソクバノのコーヒーに1クック請求するというもの。たぶん簡単に引っかかる旅行客多数でしょう。

現地の人はペソクバノとクックの換算を瞬時にやります。が、旅行者は慣れていない。そこで、その変換でちょろまかすということが多々発生します。

下の写真のような看板は間違いなくペソクバノです。例えば下の看板だと、Pizza Queso=チーズピザ=10ペソクバノ。CAFE=コーヒー=1ペソクバノ。とまぁ安いのが分かります。これクックだと思って払ったら大損します。

こういう看板もペソクバノ。上のようなデザインの看板や、下の差し替え可能なデザインの看板が定番で、とにかくみんなペソクバノです。だいたい25ペソクバノのものはみんな定食的なメニューです。迷ったら、この辺のものを指さし注文すればよろしいかと。

ふたつの通貨を使いこなそう

面倒ではありますが、ちゃんと理解して、ちゃんと使いこなしましょう。よくお札を見て、自分で見極める。不安なときはお店の人に「これはペソクバノ? クック?」と訊ねましょう。ぼくらの経験では聞いて騙す人はいないようです。みんな正直に「ペソクバノだよ」と教えてくれます。

キューバ人は意図的にぼったくったりする人は少ない印象があります。東南アジアの多くの国のように、露骨に高値を突きつけて、交渉しないとならない、ということはありませんでした。しかしみんな貧しいのも事実で、「出来心で」不正直になることが多い印象でした。

ぼくらはこの通貨のことを理解してからは変なぼったくりなどに会うこともなく、極めて快適な滞在となりました。ぜひよく勉強してから行きましょう。

ちなみに!

イランの通貨も分かりづらいんですね。行く前に知っておきたいものです。
間違いやすいイランの通貨の話 他の国とはひと味違います

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