ぼくらが見たキューバの食料配給制度と医療と教育 何が正しいか言える人などいるのか?

キューバの生活の柱となる政策である、食糧配給・医療・教育について、ぼくらが見たことをお話します。結論から言えば「掲げた理想は高いが、現実はやはり厳しい」という状況でしょう。

また、世界幸福度指数を見たとき、キューバは6位。日本は95位。人はどういうときに幸せを感じるのでしょう? 平等とは何か? 幸せとは何か? と考えさせられました。


キューバの政治

共産党一党による社会主義です。なんだか「社会主義」という言葉からネガティブな印象を持つ人も多いような気がします。資本主義が正しくて、平等で、幸せであり、社会主義は恐ろしい、独裁政治の象徴のように捉えている人もいるでしょう。

資本主義の先進国では教育によってこういうイメージを植え付けようとしている風潮もあり、本当に平等な目線で判断できていない人も多いと思います。試しに辞書を引いてみました。

資本主義の生み出す経済的・社会的諸矛盾を,私有財産制の廃止,生産手段および財産の共有・共同管理,計画的な生産と平等な分配によって解消し,平等で調和のとれた社会を実現しようとする思想および運動。共産主義・無政府主義・社会民主主義などを含む広い概念(大辞林)

簡単に言えば、みんなで何もかもを共有しよう、ということ。お金も資源もサービスも何もかも共有。全員が同じだけ給料をもらい、同じものを食べていれば、“調和のとれた社会” が実現するだろう、とまぁ、そういうわけです。

で、本題に戻りますが、キューバはこの社会主義を取っているわけです。そして今回取り上げるのは食料配給・教育・医療の3点です。というのもこれらは人が生きていく上で、かなり重要な位置を占めると思うから。みなさん日本と比較しながらご覧ください。

食糧配給

食料については完全に無料ではないものの、限りなくタダに近い額で食糧が配給されます。つまり貧しかろうか、なんだろうが、食料を手にするのは難しくありません。これは凄いことだと思うのです。

こういうことを簡単に比較してはいけませんが、例えばインドなど飢えて死んでいく人が山ほどいる中、キューバでは多くありません(もちろんゼロでもない)。平均月収が20ドルという数字を見たとき、普通なら餓死者多数となってもおかしくないだろうに、食料が配給されるから、とにかく食える。

配給制度の中身にもう少し踏み込むと、国民は配給カードのようなものを持っていて、配給が実施される日に、カードを持って受け取りに行きます。日によって受け取れるものが異なり、今日1ヶ月分の卵をもらったかと思えば、来週は1ヶ月分の鶏肉、また別の日に1ヶ月分の野菜、ってな具合。

で、その内容を覗いてみると悲しくなるほど少ない。

ぼくらが見たのは鶏肉の支給でした。1ヶ月分と言って見せてくれたのは小さなビニール袋に入った、なけなしに肉片。そうですね……、家族で1〜2食分でしょうか。

米や卵も少ないらしく、もう結論を書いてしまえば「足りない」のひと言に尽きるわけです。で、みんなどうするかというと、闇市場ならぬ自由市場というものがあります。


決して安くないのですが、とにかくそこで買うことが出来ます。肉でも野菜でも卵でも、金さえ出せば買えます。ちなみに高いとはいえ、外国人の僕らからすれば割合安いですよ。しかし月収20ドルだと思うと、とても気楽に買えないわけです。

で、みんなどうするか? 副収入を求めて働きます。例えば3輪自転車タクシーがハバナ中を走り回っていますが、その中の一部は副収入目当てです。ぼくらが知り合った学校の先生は、休みの日など3輪自転車を2ドルで借りて、観光客相手に稼いでいました。

というわけで、20ドルぼっちの月収は副収入もろとも、食料に消えていく。それが庶民の現実です。

しかしこの食糧配給制度は少ないとはいえ、優しさもあり、妊婦・乳幼児がいると食料の充実度が上がります。これを「優しさ」と呼ばず、キューバ政府が “乳幼児の死亡率の低さ” を世界に売るための政策であり、他の良くない政策を隠すための隠れ蓑だ!、と言う人もいます。

もちろん良くない政策は正さなければならないでしょうが、それとこれとは別。子どもを救えない政治に魅力などあるわけない。

教育

なんと教育は無料です。貧しくても、何でもとにかく学校に行くことは出来ますし、まじめに勉強しさえすれば医者でも何でもなれます。ぼくらが宿泊していた過程の娘は今まさに大学に通っていて、もうすぐで歯科医になれるそうです。

で、歯科医になったらバラ色の人生が待っているかと言うと、そう簡単にはいかないわけです。歯科医だって月収は20ドルに毛が生えたくらいでしょう。決して50ドルにはなりません。医者ですよ! 本物の。医者がもらいすぎる社会もいかがなものかと思っていますが、20ドル……。
そうなると、どういうモチベーションで医者になるのかと言うと、外国への派遣を目指している人が多いようです。キューバの政策なのか、医者になるといろいろな国に医者として派遣されます。そうすると、さすがにいい給料がもらえるのです。またキューバに残された家族にもまとまった額(50ドルと聞きました)が入り、医者本人にもまとまった額が入る。数年の派遣期間が終わると、結構な貯金ができるそうです。

とにかく、教育は無料なわけです。すごいですね。

しかも(不足とはいえ)食糧も配給される。これがインドだと、無料の学校もあるのですが、食料が圧倒的に不足しているので、勉強する暇があったら食べ物を探してこないとならないわけです。だから子どもが学校に行かない。キューバはその辺、安心して学校に行けますね。

医療

医療も無料です。とはいえ、薬は別。でも本当の問題はそこではありません。

例えば扁桃腺炎を起こしたとする。抗生物質が必要です。で、医者は抗生物質と痛み止めとかを処方してくれます。ここまで無料! で、処方箋を持って薬局に行く。ところが物資不足で抗生物質がなかったりする。仕方ないから痛み止めだけ持って帰るが、飲んでも治らない。

そう。医者に診てもらっても病気は治らない。病気ってのは薬か手術が必要なわけです。で、そのためには薬や麻酔など物資が必要となる。でもその物資がない。だから医療が無料とはいえ「安心して病気になれる」わけではない!

またもうひとつ考えさせられる話題があります。

キューバには外国人用の病院というものがあります。当然高いのですが、その分なのか、物資も割合豊富。つまり先の例だと、外国人ならば(あるいは裕福ならば)そちらの病院に行って、治してもらえるわけです。

外国人なら治してもらえ、現地の人は物資不足に悩んでいるとしたら……。ふむ。

まとめ

どれもまだ理想には届かないようです。

しかしこの場で「だから社会主義はダメなのだ!」と叫ぶつもりは毛頭ありません。資本主義だってこの問題を解決できていないから。いや、資本主義国の方がこの辺の問題は根深いケースもあるのでは? 保険に入っていないと急病でも病院に運んでもらえないアメリカが理想とも思えません。貧しくて大学に行けない日本人だっている。

キューバも問題は山積みですが、浮き沈みしながら改善していこうという意思は感じます。

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