ヘミングウェーが小説の舞台として描いたコヒマル漁港とそこを最大限に楽しむ方法

キューバの首都ハバナの近くにコヒマルという小さな漁村があります。なんとここはノーベル文学賞も受賞したアーネスト・ヘミングウェーの名作「老人と海」という作品の舞台となった場所なのです。


アーネスト・ヘミングウェー

ヘミングウェーと言えば、「陽はまた昇る」や「われらの時代に」などの作品で知られる、ノーベル文学賞を受賞した小説家です。狩猟や闘牛、戦争を題材に、短編・長編の作品を数多く書いています。

彼はとにかく切れのいい、感情を排した文章を書くことで知られています。それは新聞記者時代に培ったようで、過剰な形容表現(すばらしい、とか雄大な、など)を使わず、感情に関しても「凄く悲しい」とか「〜〜と彼は苛立たしげに言った」などの表現をほとんど使いませんでした。それがかえって読み手に想像させることにもなり、多くの人の共感を呼んだのですね。

さて、彼はキューバに長く住んでいました。その間に数多くの作品を書いているのですが、そのひとつに「老人と海」という作品があります。ノーベル文学賞の受賞のきっかけとなった作品でもあり、彼の代表作と言えます。

なんとその舞台はキューバの首都ハバナからそう遠くない場所にあるコヒマルという小さな漁村でした。今日は、そのコヒマルを訪ねてみたいと思います。

ちなみにその「老人の海」のあらすじをネタバレしない程度に書いておきます。まぁ、実際のところ、ネタバレしたってそのおもしろさは揺るぎないと思っています。ぼくは何度か読んでいますが、魅力は褪せません。とはいえ、初見の楽しみは奪いたくないので……、

(老人と海の紹介)
主人公は漁師の老人。彼はもう80日も魚を釣っていません。老人の仕事を手伝う心優しい少年がいるのですが、少年は親に「もうあの老人のところで働くのはやめなさい」と言われ、別の船に乗ることになっています。老人は仕方なく、ひとりで海に出ます。しばらく粘り、1匹の大物がかかる。80日ぶりの獲物です。釣り上げて、港に戻ることが出来るのか!?

とまぁ、こんな感じでしょう。これを魚が釣れるかどうかのサスペンスとして読むのも面白いでしょう。それに加えて、ぜひ老人の仕事観について考えてみると文学的なおもしろさも沸いてきます。なぜ彼は釣りをするのか? なぜ彼は1番最後にライオンの夢を見るのか?

はい。ぼくはヘミングウェーの大ファンでして、短編も含めてかなり読んでいます。彼の作品が合う人合わない人がいるかと思いますが、ぜひ読んでみてほしいです。特にこの老人と海は読みやすい話ですし、分かりやすくおもしろい。ヘミングウェーを読み始める人にお勧めしたい作品です。

コヒマル漁港

さて、そんな「老人と海」の舞台となったコヒマル漁港に行ってみます。

生き方は “地球の歩き方” だとタクシーで行くことになっていますが、ちゃんと現地の人向けのバスがあります。バス停で「コヒマル! コヒマル!」と訴えていると、なんと親切な女性が「ついてらっしゃい」と案内してくれることになりました。彼女はコヒマルに住んでいるらしく、英語はほとんど話せないのですが、最後まで親切に案内してくれました。たぶん、彼女がいなかったら3倍は苦労したでしょう。バスの料金は10円もしなかったかと。

バスはコヒマルの外側に止まるので、歩いて海沿いまで向かいます。ハバナから来ると、その静かな住宅街の雰囲気に癒やされますね。

15分ほど歩いたでしょうか? 目印にしていたバーに辿り着きました。このバーはラ・テレーサといい、ヘミングウェーは常連だったお店です。ヘミングウェーは釣り好きで、いつもこの港から船を出して、釣りをし、陸に戻るとこのバーで酒を飲んだり、食事をしていたといいます。

中には彼の記念写真などがあるらしいのですが、ぼくらは中には入りませんでした。

この店を通り過ぎると、いきなり海が見えてきます。ヘミングウェーが来たということで、観光地化されているのですが、観光客はほとんどいません。時期や曜日にも寄るのかもしれませんね。

ただの海、と言われればそれまでなのですが、あのヘミングウェーが来ていた、と思うと感慨深いものになるのです。前述の「老人と海」の主人公の老人が港を出て沖に向かう、その場所がここだと思うと、作品の雰囲気と相まって、ぼんやりとした感動が込み上げてきます。

ぼくらが座って、和んでいた桟橋で親子が釣りをしていました。足下を見ると小魚が見え隠れしています。釣り好きなので、手が震えるほど羨ましかった。

少し歩くとヘミングウェーの像がありました。なんか、ぼくが想像する彼の顔と少し違うのですが……。もっと無骨な顔をしていたような……。

さて、フラフラと散歩して、しばらく桟橋で佇んだ後で、ぼくらは帰路につきました。小腹が空いたぼくらは沿道の軽食屋でハムのホットサンドを食べ、近くの野外カフェのような場所で、ビールを飲むことに。

と、そこで超ローカルな葉巻を発見しました。その値段はなんと1ペソクバノ(=4円)。地元の人が買っていました。

なんとまぁ、安いこと安いこと。ブランド物の葉巻だと600円〜2500円くらいはしますので、何分の1でしょうか? こりゃおもしろい、と1本買って吸ってみることに……。味はと言うと、非常に荒々しいタバコです。保存状態が悪い(乾燥している)こともあり、風味が抜け、辛い印象。巻きもいい加減なのか、乾燥しているせいか、吸っているうちにほどけてくる。ブランド物の高級なものに比べて、甘味や香味に欠けますが、それはそれ。きっちり濃いタバコの香りは堪能できます。昔の原始的なタバコを見つけた気分です。昔々果物が発酵してお酒になったという起源があるように、こいつにもタバコの起源を見るような気分です。いや、おもしろい。

そうですね。上品にシガーバーで吸うのを想像すると、いまいちですが、もしぼくがこの町に住んでいて、漁師でもやっていたならば、きっと日常的に吸っていただろうと想像できる味でした。

これは別の記事で改めて触れますが、キューバで試すべき葉巻には3種類あると思っています。説明はそちらの記事に書くとして、簡単に挙げると

  • ブランド物の正当派キューバンシガー(コイーバ、モンテクリストなど)
  • 葉巻ショップの職人が作るハウスシガー
  • 地元の人が日常的に吸っている、この記事で触れた路上のシガー

ここではその3つ目に出会うことが出来ました。

コヒマルはぜひ「老人と海」を読んでから

はっきり言います。ヘミングウェーを知らないと、コヒマルはただの漁村です。ハバナに比べてはるかに静かで、時間の流れが遅い、居心地のいい場所ではありますが、観光を目的に来るとただの漁村なのです。

観光地っぽい要素としてはヘミングウェーの像と、彼が行きつけだったバーがあることくらい。しかしヘミングウェーのファン、あるいは「老人と海」のファンであれば、あの作品世界の光景が浮かぶ場所として、決して損しない場所だと思います。

そしてここで提案です。

ひと味違うコヒマルの楽しみ方として、あるいは最高の楽しみ方として、もし次にキューバに行くなら試したいと思うのは、このコヒマルに滞在するというもの。すごく静かでゆっくりとした村です。海沿いの宿に何日か泊まり、キューバンシガーでも燻らせながら、海の呼吸を眺めているのも粋でしょう。そして、その数日間で「老人と海」を読む。ああ、それこそが金には換えがたい贅沢な時間の過ごし方ではないでしょうか?

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