誰にでもすぐ笑顔を見せるわけじゃないベネズエラ人の背景にあるもの
ぼくらがベネズエラに入国して最初の数日で感じたのは「みんな笑ってくれない」ということ。なんかあったの? と聞きたくなるくらい。もしかして冷たい国民なのでしょうか? 長く滞在してみて、少しだけベネズエラ人のことが分かった気がするので、ベネズエラ人の気質について書いてみましょう。
ベネズエラといっても、ぼくらが知っているのはほとんど1つの町だけ
ベネズエラ、と言ってもぼくらが知っているのはメリダという田舎町と、ここに来るまでに経由したサンクリストバルという町だけ。だからベネズエラ全体と言うのは語弊があるかもしれませんね。
メリダという町について最初の数日、
「なぜか誰も笑ってくれない」
ということに気が付いていました。
例えば宿の主人。家族経営の宿なので、毎日同じ人たちを顔を合わせるのですが、誰も笑ってくれない。普通、少なくとも営業スマイルがあるでしょう? ところが何を聞いても、無表情で答えるだけ。
「タオルってありますか?」と聞けば、「ああ、あるよ。ちょっと待ってて」と和やかに返ってくるのを期待するのですが、「ふん」とにこりともしない。宿だけじゃありません。スーパーのレジもそうです。
外国人であるぼくらがあたふたと買い物をしていると、だいたい他の国なら、笑ってくれるんですね。例えばスペイン語にうといので、金額のやりとりで苦労したりします。そうすると他の国だと笑いながら「ほら、530円だよ」ってな具合に、電卓で数字を見せてくれたり、紙に書いてくれたり、レシートを見せてくれたり、何にせよ和やかなムードになるんです。
でも、ベネズエラではそうはなりません。繰り返し「○×△◎※×△◎※」と金額を述べるだけ。いや、分からないこちらが悪いので、この対応を怒っているのではないんです。ただ単純に「殺伐としてるな」という印象を抱いただけ。
「そういやベネズエラに入ってから人の笑顔を見てないな」
と、そう思っただけなのです。
実際のところどうなのか?
このことを他の旅行者にも聞いたところ、同じような意見が返ってきました。やっぱりみんな笑顔を見せてくれない、冷たい、という印象があるようです。
ところが滞在も数日が過ぎて、みんな笑顔を見せてくれるようになりました。宿の人も、スーパーのレジの人も、他の人たちも、何度か顔を合わせると、グッと距離感が近くなります。
例えば宿の人たちもみんな優しくて、体調が悪ければアレコレ心配してくれますし、スーパーの人も困ったことがあれば助けてくれます。
ここからは想像です。
ベネズエラが置かれている状況というのは、想像以上に過酷です。例えば治安。
首都カラカスでは1日に4件の誘拐が発生し、銃が発砲され、強盗が多発する。カラカス以外でも、ひったくり強盗などが頻発するため、住民でさえもお金を財布以外にバラして持ち歩いているとのことでした。
そして陽が暮れると外出を控え、どうしても外出しないとならないときは、周りを伺いながら恐る恐る歩く。
また、ベネズエラ人を押しつけるのは治安だけではありません。極度の物不足という実態があります。
例えばぼくらが滞在している宿でさえ(中級クラスのいい宿です)、トイレットペーパーがありません。ケチっているわけではなく、スーパーにも売っていないのです。子供用のオムツ、女性用の生理用品、洗剤、食材なども、とにかく売ってない。時々入荷されると、その店には大行列ができます。
だから地元の人同士は携帯電話やSNSを利用して、どこで何が売られているかという情報をリアルタイムで共有しているそうです。それほどまでに逼迫している。
言うまでもなく政治的にも不安定で、反政府のデモがあれば、武力で鎮圧される。自由ってやつから距離のある生活を送っているわけです。
もしかしてそういう生活への不安、安全への不安、国への不安などが積もり積もって、警戒心が高まっているのではないだろうか? 安易に笑顔を見せないのではないだろうか?
そんな気がしてなりません。
でも繰り返しますが、ちゃんと顔見知りになると笑顔がステキなベネズエラ人ですよ。ステキな国です。ただちょっとだけ打ち解けるのに時間が必要なだけです。それって日本人的だと思いませんか? それに気が付くと、なんだかベネズエラ人が愛くるしくさえ思えるようになりました。